8月14日の魔法
8月14日。今日は僕の6歳の誕生日だ。
「はーちゃん、お誕生日おめでとう!」
大きな声で言われると、心臓がどきどきして、思わずママの後ろに隠れてしまう。僕は、とっても人見知りなのだ。
パパとママが、ぴかぴかの黄色の自転車をプレゼントにくれた。僕の身長にぴったりの、かっこいい自転車。本当はすごく嬉しかったけれど、人前で喜ぶのが苦手で、少しだけうつむいたまま「ありがとう」と言った。
夕方、みんなが帰ってから、僕はそっと自転車に触れてみた。まだ補助輪がついているけれど、ペダルをこぐのは難しい。何度も何度も転びそうになり、足が疲れて動かなくなってきた。
「もうやだ……」
涙が出そうになったそのとき、僕は自転車のハンドルに、ちいさなちょうちょが止まっているのに気がついた。まるで、黄色の自転車と同じ色をした、小さな宝石みたいだった。
ちょうちょは、僕の指先にひらりと舞い降りてくる。僕はこわごわと、そっと指先を差し出した。すると、不思議なことに、ちょうちょが僕の指先から、きらきらと光る粉をまき散らし始めた。その光が、自転車全体を包み込んでいく。
「わあ……」
僕が驚いて見ていると、自転車がまるで生きているかのように、すこしだけ震えた。僕はもう一度、自転車にまたがってみた。さっきまであんなに重かったペダルが、とても軽くなっている。僕は思い切って、足をこぎ始めた。
風をきって進んでいく。不思議と、全然怖くなかった。
翌朝、僕は近所の公園へ、自転車の練習に行った。近くには、知らない子どもたちが遊んでいる。いつもなら、遠くから眺めているだけなのに、今日はなんだか、僕から話しかけてみたくなった。
「ねぇ、この自転車、僕の誕生日プレゼントなんだ!」
そう言うと、みんなが「すごいね!」と集まってきた。
僕は、あの夜の魔法を思い出した。きっと、あのちょうちょは、自転車と一緒に、僕に「勇気」をプレゼントしてくれたのだ。自転車をこぐたびに、僕の世界はどんどん広がっていく。
僕の6歳の誕生日は、魔法に満ちた、特別な一日になった。
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